静かな夜の街に家々から灯りが溢れている。
小さな路地を奥に進むと、
どこか懐かしい佇まいのアパートメント。

階段を上ると隣の灯りからは
「まだかなぁ」と小さな子供の声。
朝会った時に今日は一段と
ニコニコしていたのを思い出す。

皆で過ごす時間を前に、
胸が弾んでいるのかな。
君のプレゼントを手にしたお母さんと、
数日前に会ったことは秘密だ。

「ただいま」という自分の声が、
思ったより明るい。

手にはラベルのない白い箱。
中身はケーキ。
ちょっといいやつ。
誰かのためではない。
自分のため。
今日は、ちょっとだけ頑張った。
そういう日。

前の道を、ゆっくりとご夫婦が並んで歩いていく。
ふたりは何かを思い出しているみたいに、
静かに笑っている。

「今夜はにぎやかね」
「特別な夜だ」

ひとりで過ごす夜も、誰かと過ごす夜も、
心がホッとする時間がある。
静かでも、にぎやかでも、
それぞれのあたたかさがある。

アパートの窓のひとつひとつに、
そんな灯りが、やさしく揺れていた。

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