2020.8.19
普段はあまりワインを飲まないエバリュエーターですが、
去年から何回かジョージアのワインを飲んでいます。
ジョージアは8000年前からワインを生産している国で、
クヴェヴリという素焼きの甕を使って作っているのが特徴です。
(ソ連時代に大量生産の方針が採られたため、現在は一般的な製法の方が多く、ジョージアでもクヴェヴリを使っている生産者は少ないようです)
なぜこのジョージアワインに興味を持ったかと言いますと、
古代エジプトの時代には、まだアルコールの蒸留技術が無かったので、
香料の樹脂を砕いてワインに混ぜて使用していたという香料の歴史を読んでいたためです。
もちろん現在に伝わる製法と全く同じではないと思いますが、
ジョージアで出土した8000年前(紀元前6000年)の甕は、
現在のクヴェヴリとほとんど同じ形で、ワイン造りを行っていた裏付けとして、甕の中からブドウの種も発見されています。
今まで香料をワインと混ぜて使っていたという話が今一つしっくりこなかったので、
昔ながらの製法でつくられたワインはどのようなものであったのか気になっていたところ、
このジョージアワインと出会いました。
そのタイミングでちょうど『ジョージア、ワインが生まれたところ』という映画が上映されていたので、映画館へ観に行きました。
ブドウを足で踏みつぶしたものがクヴェヴリに入れられ、
クヴェヴリはそのまま地中に埋められ、そこで発酵・熟成させていました。
▲クヴェヴリはこんなような甕だそうです
私が飲んだいくつかのジョージアワインの香りには独特の甘さがありました。
今回は2016年のヴィンテージのチツカというブドウの品種で
オクロという作り手とフェザンツ・ティアーズという作り手のワインを飲んでいます。
作り手によってその甘みには違いがありますが、果物売り場を歩いた時のようなフルーティな甘さ、
花の蜜っぽい甘さ、ドライトマトのような酸味や青みが入り混じった甘さ、
ターキッシュローズのようなジャムっぽい甘さなどが感じられました。
(フェザンツの方が華やかな香り)
比較で他の赤ワインや白ワインも飲んでみましたが、香りの系統が全く異なる印象でした。
味も赤や白とは違い、もっとブドウの雰囲気が感じられます。
とは言いましても、生食用のブドウの甘さではなく、
果皮や種子の苦み、酸味などです。(フェザンツはヨーグルトのような酸味を強く感じました)
「あぁ、ブドウを採って、潰して、甕に入れて、発酵・熟成させたものなんだな」と、
そのプロセスが感じられる様なナチュラルな風味を持っています。
だから赤とも白とも違う系統の味なのです。
▲OKRO よく見るとクヴェヴリのシルエットが描かれていますね
オクロの方は、
鼻で感じる香りには甘さがある。だけど舌で感じる味は苦みや酸味を感じているという、
鼻と舌の役割の違いを感じられる様な面白いテイストでした。
▲PHEASANT’S TEARS
フェザンツは味も香りもオクロより華やかさがあります。
ターキッシュローズのような甘酸っぱい風味はとても魅力的です。
今回はチツカというブドウの品種のワインでしたが、
ジョージアには500種を超える土着のブドウ品種があり、
ルカツィテリ、ムツヴァネ、ヒフヴィ、サペラヴィなどの品種が商品化されています。
さて、このジョージアワインに興味を持ったきっかけである、
古代エジプトの方々がワインに香料を砕いて混ぜているという話ですが、
それについては実際に飲んでみても今一つピンときませんでした。
ただ、ナチュラルながらフルーティさやフローラル感のある華やかな香りはとても魅力的で、
香り好きの方には興味深く飲んでいただけるのではないかと思います。
今後も香りにまつわる様々なストーリーを不定期で掲載予定です。
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