
2023.11.9
「天然香料だけで香水を作ることができますか」というお問い合わせをいただくことがあります。この記事では、この件について詳細を説明します。

表題のご希望があった場合、対応は可能です。しかしいくつかの懸念点があります。
ルズ及び市場の一般的な香水は「天然香料」と「合成香料」の両方を使い香りを創っています。「合成」と言う響きは良くないように感じる方もいるかと思いますが、供給の安定性や植物の保護といった点では、メリットもあります。
一方で、言葉の響きから良いイメージの先行しがちな天然香料にもデメリットがあります。
香水はトップノート→ミドルノート→ラストノートと、香りが変化していきます。
ラストノートとしておなじみのムスクやアンバーは動物由来の香料で、ワシントン条約の規制対象となっており、また動物愛護の観点からもほとんど流通していません。
また、仮に入手できたとしても非常に高価であるため、私たちの手の届く価格帯の製品の香料にはなり得ません。「天然香料のみ」にこだわる場合はそれらの香りを配合することができず、単調な香りになったり、香調によっては香りの持続性が弱くなったりすることが懸念されます。

天然のものは「身体に良い / やさしい」というイメージを持つ方も多いかと思いますが、天然香料には皮膚刺激があるものや、肌につけた部分に日光が当たるとかぶれ等を引き起こす光毒性を持つものがあります。刺激やかぶれの原因となる成分のみを取り除いた天然香料もあり、天然香料のみで香りを作る場合は、様々な特性に注意が必要です。
天然香料を使用した場合、澱(オリ)とよばれるモヤが発生する場合があります。天然香料の成分には澱の原因となる物質が含まれているためです。製造時に濾過することにより取り除いても、時間が経つと再結晶してモヤが発生してしまうことがあります。ルズでは注意事項として澱が出る可能性をパッケージ記載するようお願いしておりますが、天然香料のみで作った場合は、この可能性がより高くなります。
例えば、1gのバラの精油を得るためには、5kg以上のバラの花が必要と言われています。5kg のバラの花の価格、そこから精油を抽出するための費用等を考えたとき、香水に使用するような上質なローズオイル1gの価格はいったいどれほどになるでしょうか。 雑貨店で販売されている安価な天然香料は、グレードの低いものであったり、薄められているような場合もあります。
ここまで天然香料のデメリットを説明してきましたが、天然香料には特有の豊かな香りがあります。また、供給量は天候などにより収穫量が変わるため不安定ではあるものの、栽培された地域や収穫時期の違いなどによる香りのニュアンスの違いや、天然でしか出せない魅力も多く存在します。

通常は天然・合成を適切に使用する事で上記の懸念の無い香り製品をつくりますが、天然のみでという場合は上記をご理解いただいた上で天然香料のみの製品製造は可能です。

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